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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)2837号 判決 1950年4月18日

主文

原判決を破毀する。

本件を広島高等裁判所松江支部に差戻す。

理由

弁護人下田三子夫の上告趣意は別紙添附の書面記載の通りであってこれに対する当裁判所の判断は次の通りである。

第三点第四点について。

昭和二一年勅令第二七七号(昭和二〇年勅令第五四二号ボツタム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く関税法の罰則等の特例に関する件)は昭和二三年七月七日法律第一〇七号所得税法の一部を改正する等の法律第三八条第三号に依て同日以降廃止されたこと所論のとおりである。そうして同法第二三条に依れば関税法の一部を次のように改正するとあって関税法第七六条は「免許を受けずして貨物の輸出若しくは輸入を図り又は其の輸出若しくは輸入を為したる者は三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処す但し犯罪に係る貨物の原価の三倍が三万円を超ゆるときは罰金は其の原価に相当する金額の三倍以下とす。前項の罪を犯したる者には情状に因り懲役及び罰金を併科することを得前二項の規定は第七四条又は第七五条に該当するものには之を適用せす」と改正せられたのである。ところで原判決の確定した事実によれば、被告人等の判示無免許輸出の所為は右勅令廃止後の昭和二三年九月三〇日になされたものである。してみれば被告人等の判示無免許輸出を図った所為についてはそれぞれ昭和二三年法律第一〇七号による改正後の関税法第七六条を適用すべきに拘らず、原判決が右所為に対し各関税法第七六条昭和二一年勅令第二七七号第一条を適用したことは正に擬律錯誤の違法あるものというべきである。次に又昭和二一年六月二〇日勅令第三二八号貿易等臨時措置令第四条第一項本文に依れば不法輸出の罪の刑は三年以下の懲役又は一万円以下の罰金であるが、同条但書に依れば当該行為の目的物の価額の三倍が一万円を超えるときは罰金はその価額の三倍以下とすると定められているのである。(但し右貿易等臨時措置令は昭和二四年一二月一日外国為替及び外国貿易管理法附則二号を以て廃止されたが、同附則三号に依ればこの法律施行前にした行為に対する罰則の適用については貿易等臨時措置令はなお効力を有するのである。)然るに原判決は所論のとおり被告人等の本件無免許輸出並びに不法輸出の目的物の各原価若しくは価額を確定していないのである。してみれば被告人等の判示各所為に対して果して関税法第七六条第一項本文を適用すべきか同項但書を適用すべきものか更らに又貿易等臨時措置令第四条第一項本文を適用すべきものか又は同項但書を適用すべきものか確定できない。原判決はこの点において正に理由不備又は審理不盡の違法あるものというべきであって原判決は爾余の争点について判断を俟つ迄もなく到底破棄を免れない。

よって上告を理由ありとし旧刑訴法第四四七条、第四四八条の二を適用して主文のとおり判決する。

右は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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